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第60回(平成28年度春季)学術講演会 P会場における講演の要旨 (P01-P20)

第60回(平成28年度春季)学術講演会

P会場における講演の要旨 (P01-P20)

 
(P01)Raspberry Pi専用カメラによる玄米タンパク質含有量の推定
○稲垣啓太・丹波澄雄(弘前大)

ワンボードマイクロコンピュータであるRaspberry Pi専用の可視域および近赤外域カメラを、プラットフォームとしてマルチコプターに搭載した低高度リモートセンシングによって水稲の玄米タンパク質含有量を推定するための手法を提案する。対象地域は弘前大学金木農場の水田とし、観測対象は3種類の稲とした。本手法によって得られた玄米タンパク質含有量の推定式による推定精度は0.35%程度であった。また、推定精度は画像取得時期に依存していることも明らかになった。

(P02)干ばつ害を受けた水稲生産量とTVDIの関係
○小笠原千香子(千葉大学理学研究科)・本郷千春・田村栄作(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)・GunardiSigit(RegionalOfficeofFoodCropsServiceWestJavaProvince)

干ばつ害を受けた水稲の生産量とTVDIの関係を明らかにすることを目的として, インドネシア西ジャワ州において, Landsat8から計算したTVDIと水稲生産量の地域分布の関係を調べた. 排水路を境に生産量の多少が異なり, 低生産量の圃場では干ばつ害が発生していた. さらに, 収穫期の生産量と同様に出穂期のTVDIも排水路を境に異なり, 生産量が低い地域でより乾燥していた. 2015年のエルニーニョ現象により降水量が低下した結果, 生育必要水量が多い出穂期に水不足が生じて受粉障害等が発生し, 収穫期の不稔につながった事が考えられた. 以上より, 出穂期までの灌漑用水の供給量の差が生産量差につながっていることが示唆された.

(P03)Urban growth modeling based on multi-centers of the urban areas and land cover change in Yangon City, Myanmar
○Tanakorn Sritarapipat, Wataru Takeuchi (TheUniversityofTokyo)

This research proposed a methodology to model the urban expansion based dynamic statistical model using Landsat and GeoEye Images. Landsat Time-Series from 1978 to 2010 have been applied to extract land cover change. Stereo GeoEye Images have been employed to obtain the height of the building. The class translation was obtained by observing land cover from the past to the present. The height of the building can be used to detect the center of the urban area.The urban expansion model based on the dynamic statistical model was defined to refer to three factors; (1) the class translation, (2) the distance of the multi-centers of the urban areas, and (3) the distance from the roads. Estimation and prediction of urban expansion by using our model were formulated and expressed in this research. The experimental area was set up in Yangon, Myanmar. The experimental results indicated that our model of urban expansion estimated urban growth in both estimation and prediction steps in efficiency.

(P04)EOS-Terra/ASTERを用いたマングローブ域抽出に関する研究-ミャンマー沿岸域を対象として-
○山崎正稔(茨城大学大学院理工学研究科)・石内鉄平(明石工業高等専門学校都市システム工学科)・桑原祐史(茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター)

地球温暖化による海面上昇,高潮,台風やサイクロンによる被害の増加が懸念されている.そういった中で減災を目的とした適応策としてマングローブが注目されているが,マングローブは過伐採や植林などにより急速な分布域の変化が見られる.分布域変化の把握が課題となっているが,広域性や多様な生物が生育する潮間帯に生育するため,変化を捉えることの難しさが課題である.本研究では,この課題と水分量に対して特長的な反応をする短波長赤外に着目し,桑原らの手法で課題とされていた沿岸域の地形特性への対応とその適応効果について考察した. 結論として,桑原らの手法を改良し,沿岸域の山地に対応した手順の提案と適用効果を検証した.

(P05)高分解能衛星画像の影解析及び3Dモデリングによる建物の高さ推定
○榑林雄飛・外岡秀行(茨城大)

衛星センサの高空間分解能化に伴い、建物等の影が画像分類等の処理に悪影響を及ぼすようになっている。一方で、こうした影は高さなどの建物に関する情報も含んでいると言える。本研究では、高分解能衛星画像の影解析及び建物GISによる3Dモデルに基づき、建物の高さを推定する一手法を提案している。茨城大学日立キャンパスを観測したWorldView-2画像に対して本手法を適用した結果、影が地形の影響を受ける1棟と複雑な形状を持つ1棟を除く10棟においては、高さの推定精度は2.25m以内であった。今後、手法の改良を進めれば、本手法が建物GISの更新作業の一助になり得ると考えている。

(P06)GPS相対測位精度に及ぼす衛星仰角とSNR閾値の影響に関する基礎的検討
○中西慶・劉ウェン・山崎文雄(千葉大)

衛星仰角と信号対雑音比(SNR)に閾値を設定することにより、GPSの相対測位精度を評価した。千葉県消防学校と千葉市消防学校敷地内の何点かでGPSの測定を行い、GEONET千葉緑によって記録されたGPSデータを基準点情報として用い、相対測位を行った。閾値を変えることで、測位誤差の標準偏差とFix率にどのような変化が起きるか調べ、場所ごとの最適な閾値の値とその傾向について考察を行った。閾値により精度向上がなされたのか、実際の水平距離と建物図面を用いた垂直高さとの比較を行い、評価した。閾値による精度向上は確認されたが、使用衛星数を増やすことで閾値の効果が増し、さらなる精度向上に繋がると考える。

(P07)UAVを利用したGNSS信号遮蔽率推定手法の予備的検討
○永作俊・林航大・林悠介・御園啓太・PhangPhenpiseth・島﨑彦人(木更津高専)

GNSS測位データの信頼性に対する地形や地物の影響を評価するため,地上に設置した全天空カメラで開空度(Canopy Openness)を計測し,これとGNSS信号の遮蔽率とを関連付ける取り組みが行なわれている.しかし,開空度は地上観測を行った地点でのみ計測可能であるため,開空度からGNSS信号遮蔽率を広範囲にわたって推定することは困難である.本研究では,地上観測が必要な開空度の代わりに,小型の無人航空機(UAV)による空撮画像から算出した地上開度(Morphometric Protection Index)に基づいて,GNSS信号遮蔽率を推定することを試みる.

(P08)修正最適化法とLPGSによる幾何補正の精度の比較
○長家泰志・齊藤玄敏(弘前大学大学院理工学研究科)

本研究では、衛星画像を日本測地系から世界測地系での座標へと変換し、修正最適化法を用いて精密幾何補正を行った。実際に幾何補正が正しく行われているかを確認するためにLPGSによって処理された画像との補正精度比較を行った。比較に用いた衛星画像は幾何補正がすでに済まされており、かつ世界測地系の衛星画像ということから修正最適化法の精度比較の対象として選ばれた。修正最適化法の精度は、UTM座標のy方向ではLPGSと同等であったが、x方向では劣る結果となった。

(P09)ASTERデータから得られた岩相指標のHSV表色系による統合
○倉田夏菜・山口靖(名大)

本研究ではASTERデータの異なる波長域から得られた、複数の岩相指標の統合を試みた。複数の岩相指標の単一画像への統合は、ASTERデータの解析結果から地質解釈をする用いる際に有効だが、従来のデータ処理手法は各波長域ごとに別個に行われることが多く、統合手法はあまりなかった。本研究ではHSV表色系の3成分(色相、彩度、明度)にそれぞれの指標を割り当てることで統合を行う。今回は熱水変質帯を対象としてH(色相)に粘土鉱物の鉱物種や珪化帯、S(彩度)に各鉱物の量、V(明度)に地形を示す指標を割り当てることで、熱水変質帯の地理的な分布とともにその累帯構造をとらえることができた。

(P10)データ抽出方法の違いによる水稲の収量推定精度の検討
○布和宝音・本郷千春・小笠原千香子(CEReS)・丹野長利(山形県農業共済組合連合)・田村栄作(CEReS)

日本では農業共済保険制度を実施している。損害評価は評価員の技術に左右されるため加入者が客観性のある評価を望んでいること、評価員の高齢化が危惧されていることから、リモートセンシングやGISデータを取り入れた損害評価手法の開発に期待が寄せられている。これを受けて我々は、北海道のモデル地区で損害評価プロトタイプシステムの構築を行った。現在、この評価手法の他県への適用を試みているが、圃場サイズが北海道より小さいという理由から十分な推定精度が得られない場合がある事を確認している。そこで、収量推定に用いる衛星データの抽出方法を再考し、データ抽出方法の違いによる水稲の収量推定精度を検討したのである。

(P11)パラモータ空撮画像による草地の植生変化の抽出
○米澤千夏・小倉振一郎・齋藤雅典(東北大)

有人で飛行する有人パラモータから撮影した画像の草地管理への活用について検討をおこなった。中山間地に位置する草地を2013年と2015年の秋に撮影し、2年間の植生変化を目視判読した。対象地域では福島第一原子力発電所事故の影響で放牧を自粛している。2013年と比較して2015年の画像では直径1から2m程度の塊状の物体が増加していることが判読される。現地で確認すると、これらは高さ1m前後の大型の草本に相当した。放牧を実施していないことが、植生変化に影響を与えていることは現地調査からも確実である。パラモータ空撮の地上分解能は、このような植生変化の抽出に有効であることが示された。

(P12)LANDSAT8画像における温度異常の抽出と火山活動モニタリングへの応用
○齊藤玄敏・北山貴大(弘前大学)

本研究は,LANDSAT8の熱バンドを用いて,2015年に火山活動が活発化した大涌谷地域を対象に,地熱異常の抽出可能性を試みたものである。表面温度画像に大気補正・高度補正・地形効果補正・アルベド補正の各補正を行い,それを基に熱フラックスの計算と温度異常の抽出を行った.その結果,火山活動の状況と調和する熱フラックスの変化を確認することが出来た.このことから,雲などの影響がなければ,本手法は火山活動のモニタリングへの応用可能性が高いと言える。今後の課題として,熱フラックスの高精度抽出が挙げられる。そのために,アルベド補正後画像に現れる植生の影響についての補正方法を検討する.

(P13)衛星画像を用いた島嶼部に於ける火山モニタリング
○杉村俊郎(日本大学)・磯部邦昭(アジア航測)・山本哲司(シンク・アース・サイエンス)

列島が被災期に陥る中、地震のみならず火山活動も盛んになっている。従来より活発に活動している桜島や諏訪之瀬島に加え、阿蘇、霧島、御嶽山、箱根山、口之永良部島等活動が活発化している。ここでは注視を要すると思われるトカラ列島諏訪之瀬島に着目し、衛星画像によりその特徴と最近の動きを概観した。

(P14)ひまわり8号AHI画像の幾何補正精度の年間変動
○竹内渉(東大生研)

2014年10月に打ち上げられたひまわり8号のデータの公開が一部始まった.陸域の観測に必要なバンドが多数搭載されている中で,陸域観測に必要な幾何補正精度がどの程度確保されているのかを調べた結果を発表する.

(P15)Himawari-8/AHIの30分間隔データによるNDVIの時間変化解析
○小黒剛成・伊藤征嗣・小西智久(広島工大)・土屋清(日本気象技術士会)

今回は2015年9月23日の秋分の日に観測した日の出から日の入りまでの30分間隔のHimawari-8/AHIデータを用いて、森林・農地・砂漠・海におけるNDVI の時間変化について初期解析結果を報告する。その結果、森林、農地、砂漠におけるNDVIは日の出後の約2時間はNDVIが上昇し、その後は安定し、日の入り前の約2時間はNDVIが下降した。一方、海のNDVIは森林、農地、砂漠に比べて日中のNDVIの時間変化が大きいことが明らかになった。また、傾斜のある山岳地帯の森林等では、太陽方位と地形の傾斜方向の関係により、NDVIの時間変動が大きいことが明らかになった。

(P16)南相馬市における土地被覆動態のモニタリング(その2)
○原田一平・原慶太郎・浅沼市男・朴鍾杰・富田瑞樹・長谷川大輔(東京情報大学)

南相馬市では東日本大震災後に収穫された稲から基準値を超える放射性セシウムが検出されたことによりコメの作付けができない地域が多かったが、2014年よりコメの作付けが再開された。しかし、営農再開した作付面積は2014年5月30日の時点で震災前のわずか2%にとどまっており、南相馬市を対象地として、非耕作農地の実態を明らかにすることを目的とする。Landsat-5/TM(2009年6月2日)とLandsat-8/OLI(2014年5月31日)を用いて、南相馬市における震災前後の土地被覆を比較した結果、森林(常緑針葉樹林、落葉広葉樹林、針広混交林)の土地被覆変化は顕著に見られないが、農地面積は4245.5 haから369.8 haに減少、草地面積は3363.5 haから9792.6haに増加したことを明らかにした。

(P17)FORMOSAT-2及びLandsat-8による九十九里海岸林の観察
○青山定敬・内田裕貴・工藤勝輝・杉村俊郎(日本大学生産工学部)

Landsat-8データは無料で利用できるため、クロマツ海岸林の植生状態を把握するには有効である。しかし、地上分解能が30mであるため、クロマツ幼齢林の植生状態を把握するには十分でない。本研究はクロマツ海岸林を評価する目的で、FORMOSAT-2データとLandsat-8データを使ったパンシャープン処理について検討を行ったものである。

(P18)「ひろだい白神レーダー」観測における地形影響の特性
○丹波澄雄(弘前大)・中井恒志(三菱電機インフォメーションシステムズ)・児玉安正(弘前大)

2014年3月に弘前大学に設置された地域気象レーダー「ひろだい白神レーダー」は津軽平野の南端に位置しているため、気象庁の気象レーダ観測を効果的に補完可能である。しかし、地形的には八甲田連山、白神山地、岩木山に囲まれた盆地の中心に位置しており、低仰角観測ではレーダーパルスビームの一部が山地地形によって遮蔽され、また反射も生じる。このような現象が生じている観測データの精度は低いと考えられる。そこで本研究では国土地理院の50mメッシュ標高データに基づいたシミュレーションによって遮蔽によるレーダー反射エネルギーの減衰およびグランドクラッタの発生の特徴を推定した結果について報告する。

(P19)熱帯降雨観測衛星(TRMM)降雨レーダで観測された世界の降雨量の時系列変化
○岡本謙一(鳥取環境大学名誉教授)・林友春(鳥取環境大学)

TRMM降雨レーダデータversion 7の3A25が算出するNear Surface Rainの緯度経度5度×5度のセル毎の月平均降雨量データを用いて、全地球の降雨量の時系列変化を調べた。解析した期間は2001年9月から2012年4月まで、解析したデータの範囲は緯度±40度である。全地球の領域を5度格子ごとに海上、陸上、その他(海岸も含める)の領域に分類し、各領域についての月平均降雨量の平均値を求めた。年平均降雨量は、月平均降雨量を積算して求めた。陸上とその他の領域においては、月平均降雨量、年平均降雨量は年月と共に増加しており、その結果全地球の降雨量も年月と共に増加している傾向を示した。

(P20)多波長カメラ観測による火星ダストモデルパラメータの導出
○眞子直弘(千葉大/CEReS)・野口克行(奈良女子大)・小郷原一智(滋賀県立大)・千秋博紀(千葉工大/PERC)・鈴木睦(JAXA/ISAS)・はしもとじょーじ(岡山大)

火星ダストの光学特性を調べるため、火星ダストモデルを構築し、多波長カメラで測定した直達・散乱太陽光のスペクトルデータからダストモデルパラメータを導出する方法を開発した。スペクトルの測定誤差1%に対し、モデルパラメータの導出誤差は10%以内と見積もられた。