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第60回(平成28年度春季)学術講演会 A会場における講演の要旨

第60回(平成28年度春季)学術講演会

A会場における講演の要旨(実利用セッション「U01-U04」、特別セッション「S01-S03」を含む)

 
(A01)ALOS-2/PALSAR-2による白瀬氷河の流動速度の推定
○中村和樹(日大)・山之口勤(RESTEC)・青木茂(北大)・土井浩一郎・澁谷和雄(極地研)

ALOS-2/PALSAR-2データを用いて画像相関法を適用することにより白瀬氷河の流動速度ベクトルを求めた。JERS-1およびALOSによるSARデータから求められた流動速度と比較した結果、現在までの20年間において、Groundinglineにおける流動速度は大きく変化していないことが分かった。一方で、氷流中心における上流部において、流動速度の加速が見られ、15~20km上流の領域では現在までの20年間で最大0.9km/aの加速が見られた。また、2015年3月から6月にかけて氷河末端周辺の定着氷が大きく崩壊したことに伴い、Grounding lineにおける流動速度の変化が見られた。

(A02)Cバンド合成開口レーダを用いたツンドラ湖氷モニタリング
◯池浦友亮・中村和樹(日本大学)・若林裕之(日本大学工学部)

本研究では、Cバンド合成開口レーダを用いたツンドラ湖氷モニタリングを行った。2003年から2010年の期間にENVISATから取得された後方散乱係数を用いて、ツンドラ湖の結氷状況を観測した。解析結果から、ツンドラ湖が結氷しづらくなる傾向にあることが分かった。

(A03)熱赤外マルチスペクトル画像を用いた薄氷分類の試み(2)
○須佐綾太・外岡秀行(茨城大)

海氷観測において、薄氷域は環境変動の影響を受け易いため重要な観測対象であると言える。本報では、前報で提案した熱赤外多バンド画像による夜間観測向けの薄氷分類手法に可視画像を組み込み、昼間観測への適用を可能とした。オホーツク海のMODIS画像へ使用し、得られた結果は可視及び後方散乱係数画像と比較的良好な整合性を示した。しかし、一部の箇所において氷厚が過大推定されている可能性があり、今後の課題として挙げられる。

(A04)WorldView-2衛星画像を用いた福島第一原発における汚染水タンクの抽出
○高山直也・山崎文雄・リュウウェン(千葉大学)

2011年に発生した東北地方太平洋沖地震とその後の津波によって,福島第一原子力発電所で甚大な事故が発生した.現在,福島第一原子力発電所では汚染水の流出阻止に向けた対策が行われており,このような復興に向けた取り組みをモニタリングする手法の1つにリモートセンシングが挙げられる.本研究では,高解像度衛星WorldView-2による光学画像を用いて,教師付きの土地被覆分類を行い,福島第一原子力発電所内に保管している汚染水タンクの抽出を試みた.また,分類手法の違いによる抽出精度への影響についても検討した.

(A05)TerraSAR-X画像を用いた2015年ネパール地震におけるカトマンズ市街地の被害評価
○レンディバハリ・リュウウェン・山崎文雄(千葉大学)・笹川正(株式会社パスコ)

2015年4月25日に発生した2015年ネパール地震(Mw7.8)では,カトマンズ・ダーバ広場で多くの建物が崩壊した.本研究では多時期の高分解能TerraSAR-X画像を用いてネパールの首都カトマンズ市街地の変化を検出した.地震の前後に撮影されたTerraSAR-X画像を用いて,中央カトマンズにおいて甚大な被害を受けた建物を倒れ込み範囲で後方散乱の差分と相関係数を計算した.結果としては、建物被害を検出するためには、最適な指標は相関係数であることが分かった。

(A06)高分解能SAR画像を用いた橋梁の津波被害把握
◯井上和樹(東大生研)・劉ウェン・山崎文雄(千葉大)

本研究では,事後のSAR画像を解析して橋梁の津波被害の検出を試みた.三陸沖を東北地方太平洋沖地震津波のあとに観測したTerraSAR-X画像と橋梁のGISデータを併用した.橋軸方向の後方散乱係数に関して適切な閾値を設定することにより,落橋の抽出を試みた.本手法の適用性を検証するため,抽出結果を航空写真および被害調査書と比較した.

(A07)防災応用を目的とした切土法面の三次元計測の紹介
○橋本岳・髙栁翔平・松原真治・土屋智・竹林洋一(静岡大学)

近年,日本全体で自然災害が重大な社会問題となりつつあり,土砂災害は身近に発生し人的被害の多い危険な災害である。土砂災害発生前の避難等の対策のためには,土砂災害危険個所の情報の早期取得が不可欠である。しかし,危険レベルの高い箇所には多数の高価なセンサーが設置され警戒されているものの,危険レベルが低いところには断線センサーが設置されるのみである。つまり,既存実用化技術および研究段階の技術では高精度かつ広範囲を満たす計測が存在しない。そこで,我々は高精度かつ広範囲を安価に計測できるセンサーの実用化を目的として画像計測に関する研究を行っている。本論文では,計測装置の計測例と現地計測の様子を紹介する。

(A08)コンクリート表面ひび割れ初期発見支援を目的とした錯視誘発画像特徴合成動画の有効拡大率
○山下剛史(東理大)・広田健一・勝尾伸一(日本シビックコンサルタント)・小島尚人・大和田勇人・大屋優(東理大)

This paper discusses the effective magnification ratios of Feature Composite Moving image (FCM image) inducing visual illusion (i.e., pseudo-rotational and persistent of vision (Kojima, et.al., 2010)) for initial detection of fine cracks of concrete surface. The animation-like FCM image is produced by continuously displaying emboss processing-based images (i.e., shade images) according to the eight directions of light sources. Compared with the visibility of FCM images in each case with respect to the magnification ratios according to the distance (i.e. 4m, 6m and 8m) from the viewpoint to the concrete surface, the results can be summarized as follows: i) the range of magnification ratios of FCM image between 20 and 40 times is recommendable for initial detection of the fine cracks of 0.1-0.2mm” in width and ii) based on this experimental results the operating procedure on real-time processing of magnification and reduction for the FCM image has been compiled for finding fine cracks as well as for supporting efficient and effective inspection on site.


 

(U01)ドローン空撮画像を用いた消防訓練搭の3 次元モデル構築
○田邉諒士・松田薫元・中西慶・劉ウェン・山崎文雄(千葉大)

近年,UAVとデジタルカメラの低価格化,性能向上により高画質の低空空撮画像を容易に撮影できるようになった.さらに,SfM (Structure from Motion)手法を空撮画像に適用することで,撮影した建物や地形の詳細な形状とテクスチャをもつ3 次元モデルの作成が可能である.UAVとSfMを組み合わせることで,立ち入り困難な災害現場や地形調査等において効率的に3次元モデルの生成が可能であり有効に利用されている.しかし,画像のみで作成した3 次元モデルは,位置情報を持たないため体積や距離を測定できず,定量的な状況把握が困難である.本研究では,千葉市消防学校訓練棟を対象に3 次元モデルを作成し位置情報を付加することで定量的に観測できるかを検証した.

(U02)反射板による低軌道衛星への太陽光照射実験
○岩田敏彰・神山徹・加藤創史・中村良介(産総研)

0.3m角の鏡を用いた反射板を製作し、低軌道衛星、今回はランドサット7号に対して太陽光の反射実験を行った。観測画像では、反射板を置いた位置に輝点が観測され、太陽光がランドサット7号に向けて反射されたことが確認できた。ただし、計算上はさらに明るく観測されるはずであり、反射板の角度設定精度を高めることによりさらに明るく観測できると期待できる。この方法はGCPとしての利用やイベントへの活用が考えられる。

(U03)全球DSMを使用した堤防抽出方法の提案と氾濫シミュレーションへの展開
○川嶋良純(茨城大学)・熊野直子・田村誠(ICAS)・桑原祐史(茨城大学)

地球温暖化の影響で海面が上昇することにより,現在よりも沿岸域での災害の増加が懸念されている.高潮などの沿岸域での災害を防ぐためには堤防の建設や嵩上げが有効であるが,現在の全球における堤防の整備状況を示したデータが存在しないため,堤防の整備目標を立てることが出来ない.そこで,本研究では全球で整備されているAW3Dを用いて堤防を抽出する方法を提案した.本手法を用いて日本の堤防抽出を行った結果,1,015kmの堤防を抽出することに成功した.今後は本手法の精度評価および抽出した堤防データの実用性について検証する予定である.

(U04)機械学習とSfMを併用した高山・亜高山植生分類の高精度化
○大西正道(アジア航測)・小熊宏之(国立環境研究所)・高橋耕一(信州大)・下野綾子(東邦大)

機械学習によるオブジェクトベース分類にSfMによるDSM特徴量を活用することで、高山帯~亜高山帯における植生分類の精度を向上した。オルソ画像によるRGB値からスペクトルやテクスチャに関する特徴量に併せて、SfMにより構築したDSMから植生の形状や地形に関する特徴量を算出した。それらRGB値およびDSMによる特徴量と現地調査データをもとにした教師データから、相観区分および生活型区分の2区分でランダムフォレストを用いて分類モデルを構築し、そのモデルで検証データを分類して精度比較した。その結果、両区分ともにRGB値のみによる特徴量を用いたモデルよりRGB値とDSM双方による特徴量のモデルの方が高い分類精度を示した。


 

(S01)小型UAVを用いた稲作農業支援と栽培実践
○田中圭(日本地図センター)・近藤昭彦(千葉大)

UAVは空撮以外にも各種センサ機器を搭載した空中計測を行うことができるため、さまざまな分野から期待されているツールである。その中でも農業分野におけるUAVの活用及び普及が有望視されている。本研究では小型UAVを用いた水稲モニタリングを2014~2015年の2年間において実施した。初年度は1)個人で安全に運用できること、2)低コストで導入できること、3)精確な生育状況の分布を把握できることを目標とし、運用およびモニタリングを中心とした実証実験を行った。次年度は初年度の分析結果から得た知見及び問題点を踏まえ、水稲栽培の生産向上に取り組んだ。

(S02)小型UAVの災害リスク評価・監視・対応への活用
○井上公(防災研)

低高度からの機動的な空撮を可能とする小型UAV(無人機、ドローン)は、自然災害に関する各種調査研究、リスク評価・監視・対応に有用なツールである1)。我々は2011年の東日本大震災以来、小型UAVを自然災害の記録や、断層地形調査等に活用してきた。最近はUAVを事前のハザード・リスク評価や災害発生時の対応に活用するための実験を重ねている。本論文では我々の使用しているUAVシステムと、調査・実験の事例を紹介し、最後に今後の課題を述べる。

(S03)地方自治体におけるUAVの応用と課題
○齋藤修(茨城大学)

近年、様々な場面でUAVを利用した実証実験や実運用が行われている。特に地方自治体における取り組みが少なからず進められている。地方自治体は職員数の削減が顕著である。これは、組織の効率化、スリム化を行うためであるが、災害発生時には技術的な判断や対応に遅れ、初動に遅れを生じる要因になり得るものである。これにより見直しを図る自治体も多いが、雇用費用や人材不足が大きな問題である。このため、安価で効率的なツールとしてUAVの導入が積極的に検討されている。たとえば空中からの画像撮影、農業での薬剤散布、送電線点検、防災対策等に利用が拡大されている。茨城県では、不法投棄防止・抑止や海岸侵食調査、ダムなどの構造物長寿命化のための検査ツールとして利用が期待されている。その現状と問題点を報告する。